試作金型から量産金型へ移行する際に、設計者が忘れてはならない『樹脂収縮率』の罠
- ■ 樹脂収縮率とは
- ■ 同じ樹脂収縮率でも試作金型と量産金型で寸法差が生じる理由
- ■縦と横で縮み方が変わる?収縮の「方向(異方性)」への注意点
- ■ 量産金型では成形条件まで含めて確認することが大切です
- ■ 試作から量産へ移行する際は樹脂収縮率をご確認ください
試作金型では狙い通りの寸法だったのに、量産金型で成形すると寸法が合わない。
このような問題が発生することがあります。
その原因を考えるうえで欠かせないのが「樹脂収縮率」です。プラスチックは金型内で冷えて固まる際に収縮するため、その変化を見込んだ金型設計が必要となります。
ただし、同じ樹脂を使用し、同じ収縮率を設定していても、試作と量産で成形品の寸法が一致するとは限りません。
今回は、樹脂収縮率の基本と、試作金型から量産金型へ移行する際に確認しておきたいポイントについて解説します。
■ 試作から量産への移行でこのようなお悩みはありませんか
「試作では寸法が出ていたのに、量産品では寸法がずれてしまった」
「同じ樹脂を使っているのに、試作と量産で成形品の大きさが違う」
「量産金型を設計するとき、試作金型の寸法をそのまま参考にしてよいのかわからない」
「樹脂メーカーの収縮率を使って設計したが、狙った寸法にならない」
試作から量産へ移行すると、金型の大きさや構造、成形条件などが変わることがあります。
そのため、試作時の結果だけでなく、量産時の条件まで考えて樹脂収縮率を確認することが大切です。
■ 樹脂収縮率とは
樹脂収縮率とは、金型内に充填された溶融樹脂が冷えて固まる際に、どの程度小さくなるかを表す数値のこと。
例えば、100mmの成形品を作る場合でも、金型側のキャビティ寸法を単純に100mmで加工するわけではありません。キャビティとは、金型内部に設けられた製品形状を作るための空間です。
成形後に樹脂が冷えて縮む変化を見込み、あらかじめ金型寸法を大きめに設計するのが基本的な考え方となります。
ただ、収縮の程度は使用する樹脂の種類によって異なります。
また、同じ種類の樹脂でもグレードやガラス繊維などの添加材によって収縮の傾向が変わるため、実際に使用する材料の確認が欠かせません。
■ 同じ樹脂収縮率でも試作金型と量産金型で寸法差が生じる理由
注意したいのが、樹脂収縮率そのものが変わるわけではなく、金型構造や樹脂の流れ方によって成形品の寸法に違いが生じるという点。
例えば、試作金型は1個取りが一般的ですが、量産金型では生産効率を考慮し、2個取りや4個取りなどの多数個取りを採用するケースがあります。
取り数が増えると、金型内の製品配置や樹脂の流れ方が変わり、各製品への充填圧力や冷却状態にも違いが生じる場合があります。
また、樹脂温度や金型温度、射出圧力、冷却時間といった成形条件も、実際の成形品寸法に影響する要素。
つまり、同じ樹脂を使用し、同じ収縮率を設定していても、量産金型では想定していた寸法との差が生じる可能性があるということです。
試作時の結果だけで判断せず、量産金型の構造や成形条件を含めた確認が必要です。
■縦と横で縮み方が変わる?収縮の「方向(異方性)」への注意点
樹脂収縮率を確認する際、数値の大きさだけでなく、樹脂が収縮する方向にも注意を払う必要があります。
特にガラス繊維などで補強された樹脂では、樹脂が流れる方向と、それに直角な方向で収縮率に差が生じることがあります。このように方向によって材料の性質が異なることを「異方性」と呼びます。
例えば、収縮率を製品全体に一律で適用した場合、縦方向は寸法公差内に収まっていても、横方向では寸法が外れてしまうケースも。
異方性による収縮差は、寸法外れだけでなく、製品の「反り」や「ねじれ」の原因にもなります。
特に試作金型から量産金型へ移行する際、ゲート位置や樹脂の流れ方が変わる場合には注意が必要です。ゲートとは、溶けた樹脂が製品部分へ流れ込む入口のこと。
樹脂の流れ方向によって収縮の傾向が変わるため、量産金型では製品形状と樹脂の流れ方をあわせて確認することが大切です。
■ 量産金型では成形条件まで含めて確認することが大切です
量産金型を設計する際は、材料メーカーが提示するカタログ値の収縮率を確認することが基本となります。
ただ、メーカーの公表値には一定の幅が示されていることも多く、その数値だけで最終的な製品寸法を正確に予測するのは困難。
試作時に使用した樹脂のグレード、実際の成形条件、得られた寸法データを整理し、量産時に何が変化するのかを確認しておきたいところ。
特に寸法精度が求められる製品では、量産金型での初回成形試験となる「T0トライ」で寸法を測定し、必要に応じて金型側の調整を行います。
同じ樹脂収縮率で設計していても、量産金型ではT0トライ後に寸法修正が必要となるケースも少なくありません。
金型完成後に大幅な寸法修正が必要になると、追加工や入れ子の作り直しが発生し、費用や納期に影響することも。入れ子とは、金型の一部分を交換・加工できるようにした部品のことです。
試作から量産へ移行する段階で、収縮率と成形条件をセットで確認し、トライ後の寸法調整も想定しておくことが、手戻りを減らすポイントとなります。
■ 試作から量産へ移行する際は樹脂収縮率をご確認ください
試作金型から量産金型へ移行する場合、試作時の寸法だけにとらわれず、「量産環境では何が変わるのか」を事前に整理しておくことが大切です。
樹脂の特性や収縮方向を理解し、量産時の成形条件やT0トライ後の寸法調整まで考慮することが、手戻りを減らすためのポイントとなります。
当社マイクロファスナーでは、グループ会社の神山製作所と共に、射出成形用金型の設計・製作に対応しております。試作から量産への移行時における寸法調整や、樹脂収縮を考慮した金型設計でお困りの際は、お気軽にご相談ください。
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