COLUMN コラム

プラスチックに関係する技術用語(あ行)

今回はプラスティクに関係する技術用語をご紹介していきます。
どこかで聞いたことがある用語もあるかもしれないですが、おさらいできればと思います。

ISO

International Organization for Standardization (国際標準化機構)の略称です。

工業分野(電気関係を除く)の国際標準規格を策定する組織であり、各国一組織のみ加盟することができます(日本からは「日本工業標準調査会(JISC)」が加盟)。

「ISO9001」「ISO14001」など、ISO+数桁の数字+αの名称で規格が策定され、その内容に従っていればISOから認証を受けられます。

アニール処理

プラスチックの残留応力を取り除くための処理であり、この処理を施すことによってプラスチックの寸法安定性を向上させることができます。

一般的に熱風乾燥機や電気炉などを用いて行われる処理であり、一定時間・一定温度で加熱してから徐々に温度を常温まで下げるという流れです。

寸法を重視する精密部品や、塗装や印刷などを施す製品において重要な処理となります。

エステル結合

酸とアルコールを反応させると起こる脱水反応により生成する結合のことで、構造式「-COO-」で表されます。

エステル結合を持つプラスチックのことを「ポリエステル」と呼び、水やアルカリ性の薬品で加水分解を起こして劣化するという特性があります。

エンプラ

「エンジニアリングプラスチック」のことであり、主に工業用に用いられるプラスチックのことです。

明確な定義はありませんが、汎用プラスチックと比較して耐熱性や機械的強度に優れています。

エンプラの中でも特に耐熱性が高いプラスチックは「スーパーエンプラ」と呼ばれます。

応力緩和

物体に一定の変形を与えた際に、物体の内部で発生する抵抗力が時間の経過とともに小さくなる現象のことです。

ラケットの「ガット」が応力緩和の説明に用いられることが多いが、意図的にひずみを与えて発生する反力を利用した製品に関しては応力緩和特性を考慮しないとトラブルの原因になります。

押し出し成型

プラスチックの成型方法の1つであり、溶かした原料を金型を通して押し出して固める方法です。

金型断面の形状に成型したプラスチックを継続して成形することができる成型方法であり、シート材やパイプ材、丸棒材などさまざまな種類があります。

プラスチックに関係する技術用語(か行)

回転成型

中空の金型に粉末状またはペースト状のプラスチック原料を投入し、金型を熱しながら回転させることで成形する方法です。

この成型方法では熱で溶けたプラスチック原料が遠心力により金型内部に付着し、金型に沿った中空形のプラスチック製品となります。

主に、大型のタンクなどを製造するのに適している成型方法です。

可塑性

ある個体に力を加えて変形させた際に、一定以上の力が加わった際にその変形が元に戻らないことをいいます。

「塑性」ともいい、プラスチックのような「熱可塑性樹脂」は熱に対して顕著にこの可塑性を示します。

この性質により、熱によって変形させたプラスチック製品は成型した形を保つことができますが、汎用プラスチックの多くはある程度の力や熱量を加えることで変形を起こしてしまいます。

ガラス転移点

結晶性プラスチックの温度を上げた際、分子間力にとらわれない非晶質部分の分子が動き出す温度のことをいいます。

この温度以下ではガラス状態であり、その上の温度域ではゴム状態です。

さらに温度を上げるとプラスチックが溶解する「融点」に達します。

キャスト成型

硬化剤を投入した液状モノマーをガラス板などで作った型に流し込み、重合してから取り出す成型方法です。

板状のプラスチック製品を作るための成型方法であり、主にアクリル樹脂版を製造する際に用いられます。

共重合

2種類以上のモノマーから高分子を作り出すことをいいます。

2種類のモノマーから作られた共重合体のことを「コポリマー」、3種類の場合は「ターポリマー」です。

コポリマーは、モノマーの配列によって「ランダム共重合」「交互共重合」「ブロック共重合」「グラフト共重合」に分類されます。

高密度ポリエチレン

金属酸化物などを触媒とし、常圧またはわずかな加圧によって重合したポリエチレンのことです。

耐衝撃性や耐薬品性、耐候性に優れたプラスチックであり、旧JIS K6748:1995においては「密度0.942以上のポリエチレン」と定義されています。

プラスチックに関係する技術用語(さ行)

射出成型

「インジェクション成形」ともいい、プラスチック原料を加熱して溶かした状態で金型の中に加圧して注入し、冷やして固める成型方法です。

他の成型方法と比較して、同じ製品を大量に作ることに長けており、一般的に熱可塑性樹脂を使用しますが熱硬化性樹脂を使用することもあります。

真空成型

プラスチックシートを加熱して柔らかくした後で型に被せ、真空状態にすることで型に密着させてから冷却して成型する方法です。

プラスチックの熱成型の中で特に広く普及している成型方法の1つであり、雄型を使用する方法を「ドレープフォーミング」、雌型を使用する方法を「ストレートフォーミング」といいます。

重合接着

アクリル材と同じモノマーを被着体の間に流し込んで、一定の温度で重合させることで接着させる方法です。

水族館のアクリル水槽によく用いられている接着方法であり、溶剤接着(被着体の表面を溶かして接合する方法)と比較して強度や耐久性、外観の美しさで優れています。

アクリル材を使用する場合、板材を複数枚使用して厚みや面積を増やすことが可能ですが、接着時の気泡の除去が完成品の品質に大きく関わることになります。

生分解性プラスチック

主鎖に酸素が含まれており、微生物によって分解されるプラスチックのことです。

自然界にゴミとして残らないため環境に配慮でき、償却する場合の熱量が少なくて済むといったメリットがあります。

一方で一般的なプラスチックよりもコストが高くなり、機能や耐久性の限界や、再利用できないため使い捨てることが前提になるなどのデメリットがあるのです。

生物資源から製造される場合(バイオプラスチック)もありますが、石油から製造される場合もあります。

旋盤加工

製造物を軸に固定して回転させ、刃物を動かして軸対称に切削する加工方法です。

主に製造物を球体や円すい形に加工する際に用いられ、刃物の当て具合などの条件を変えることでさまざまな加工に対応できます。

プラスチックに関係する技術用語(た行)

耐〇〇性

プラスチックが、対象となる物質などによる変化にどれだけ強いか(形質変化を起こさないか)を示す性質です。


耐候性:日光や風雨などの天候条件の変化に対する耐性

耐衝撃性:外部から瞬間的に加えられる力に対する耐性

耐食性:化学薬品や屋外暴露などによる変化に対する耐性

耐熱性:高温に対する耐性

耐燃性:炎にさらされた時に燃えにくさを示す耐性

耐薬品性:化学薬品に対する耐性

耐溶剤性:溶剤に対する耐性

体積抵抗率

電気を通しにくい性質を示す数値です。

電気抵抗率とも呼ばれており、その中でも「電気が物体の内部を流れる場合」のことを体積抵抗率と表現することが多いです。

体積膨張率

温度が上昇した際の体積の膨張割合を示す数値です。

これに対して、温度変化による物質の長さが変化する割合のことを「線膨張率」といい、長さと体積が変化する割合のことを「熱膨張率」といいます。

超高分子量ポリエチレン

通常の製造工程よりも反応時間を長くすることで、分子量を大きくしたポリエチレンのことです。

通常のポリエチレンは2万~30万の分子量であるのに対して、超高分子量ポリエチレンは100万~700万という分子量となっています。

熱可塑性樹脂に分類され、その中でも特に耐衝撃性に優れており、搬送用機械の部品や人工骨などの材料として用いられることが多いです。

また、低温特性(低温時の機械的強度)もあるため、スキーやスノーモービルのギアレールなどの部品として使用されることがあります。

低密度ポリエチレン

別名「軟質ポリエチレン」といい、その名の通り柔らかいポリエチレンです。

一般的なポリエチレンのような長い高分子構造になるのではなく、短くランダムに分岐した構造であり、結晶化度が低いのが特徴です。

融点が低いですが、その柔らかさを活かしてホースや農業用シート、中空の容器などの素材として用いられることが多いです。

天然樹脂

自然界に存在する植物から得られる樹脂のことです。

「琥珀(こはく)」「松脂(まつやに)」「漆(うるし)」「天然ゴム」などが該当します。

電導性

電気を通す性質のことです。

一般的にプラスチックは電気を通さないと思われており、製品の中には絶縁体としてプラスチックを使用しているケースもあります。

導電性プラスチック(ポリアセチレンなど)の中には金属並みの導電性を持つものがあり、ドーピング剤によって処理することでその導電性を高めることができます。

プラスチックに関係する技術用語(な行)

内部応力(残留応力)

成型後に、製品の内部に残っている応力のことです。

一般的に、プラスチックを熱成型する際には原料を型の内部に射出する際、圧力をかけます。

成型後は当然ながら射出圧力はかからなくなりますが、射出の際にかけられた圧力が成型した製品内に残留してしまい、特に「意図していない内部応力」は成型後の製品の変形や破損の原因になる可能性があります。

ナイロン

ポリアミド系繊維の通称です(本来はアメリカ企業の商品名を指す)。
一般的なナイロンの素材的性質として「耐薬品性が高い」「吸水性が高い」「耐衝撃性が高い」ことが挙げられます。

さらに、共重合化(2種類以上のモノマーから高分子を作り出すこと)などによる改質がしやすく、「エンジニアリングプラスチック」として用いられる例も多いです。
「ナイロン6」「ナイロン11」のように名称に数字が用いられており、この数字は合成原料の炭素原子数に由来しています。

ナフサ

プラスチックの原料となる物質です。
原油を加熱分解することでナフサやガソリン、軽油や重油などが精製され、ナフサをさらに加水分解することでプラスチックの原料である「エチレン」や「プロピレン」を精製できます。
ちなみにナフサから作られたプラスチックの原料は最初、液体や気体の形をとっているため、これに手を加えることで固形化して「ペレット」と呼ばれる原料へと形を変えて利用しているのです。

難燃剤

素材に「燃えにくくなる」という特性を添加するための添加物です。
前述の通り、プラスチックは原油から作られている、つまり有機化合物であるため、基本的に燃えやすくなっています。

この燃えやすさを改良するために用いられるのが難燃剤であり、塩素やリンなどを分子内に有し、これらを素材に添加することで難燃性・自己消化性をもたせるのです。

熱伝導率

内部で熱が伝わる速度のことです。
数値が高いほど熱が伝わりやすく(高熱伝導)、一般的なプラスチックは熱伝導率が低いため、素材によっては熱を遮断する目的で使用されることもあります。
近年は熱伝導率の高いプラスチックも開発されており、高い放熱性を利用した製品作りに応用されています。

粘性(粘度)

素材が流体の状態での、粘りの強さのことです。
粘性の度合いによって、流体時の流動性の良し悪しが問われることになります。
一般的にプラスチックは溶融状態、つまり溶かして流体になっている状態で使用するため、粘性が高いプラスチック素材は成型しにくい特性を有していることになるのです。

プラスチックに関係する技術用語(は行)

バイオマスプラスチック

バイオマス(生物資源)を原料として作られたプラスチックのことです。
バイオマスとは、生物由来の有機性資源(化石資源を除く)であり再生可能な物質と定義されており、「カーボンニュートラル(地上にある植物などを原料とするため、地上の二酸化炭素の増減に影響しない)」の特性を持ちます。
また、バイオマスプラスチックの多くは「生分解性プラスチック」としての性質を持っており、微生物によって分解されてバイオマスプラスチックの原料に循環できるという性質があります。

バリ

プラスチックを成型する際に生じる、成形型の隙間に入り込んだ素材が固まった部分のことです。
基本的に余分な部分であり、完成品に至るまでに取り除かれますが、製造技術等の問題でバリが残っていることもあり、製品としての価値や性能を下げる要因となります。

ひけ

プラスチックの原料となる物質です。
原油を加熱分解することでナフサやガソリン、軽油や重油などが精製され、ナフサをさらに加水分解することでプラスチックの原料である「エチレン」や「プロピレン」を精製できます。
ちなみにナフサから作られたプラスチックの原料は最初、液体や気体の形をとっているため、これに手を加えることで固形化して「ペレット」と呼ばれる原料へと形を変えて利用しているのです。

ペレット

プラスチックの原料のことです。
プラスチックと各種添加剤を合わせたもので、一般的に熱可塑性プラスチックは小さな球状や円柱状のペレットが市販されています。

放電加工

放電のエネルギーによって加工する工法のことです。
機械による切削が困難なほど硬い素材などの加工に適しており、機械による切削加工よりも精密な加工を可能にします。

ポリマー・ポリマーアロイ

「ポリマー」とは、モノマー(単量体)が重合を繰り返すことで生成される高分子化合物のことです。
「ポリマーアロイ」とは、複数の高分子ポリマーを混合して性質を変えたプラスチックのことをいいます。
複数種類のポリマーを合わせることによって新しい性質を持ったプラスチックを作り出すことができ、「エンジニアリングプラスチック」を開発するための方法として用いられています。

プラスチックに関係する技術用語(ま行)

曲げ強度

プラスチックが、曲げ応力にどれだけ耐えられるかを示す数値です。
強度試験においては、二つの支点にプラスチックの試験片を水平に乗せて、中央から曲げ荷重を与えていき、試験片が亀裂あるいは破壊された際の最大荷重で測定します。
「ポリカーボネート」や「塩ビ」は曲げ強度に優れた素材です。
一部のプラスチックは曲げ続けることで元に戻らなくなるので注意が必要になります。

マシニング加工

1台でフライスや穴あけ、ネジたてなど数々の加工を連続で実行できるNC工作機械を用いた加工方法です。
プログラム制御によって自動的に加工・使用工具の交換を行い、精密な加工を可能とします。
手作業や従来の加工設備では困難な加工も実現でき、加工にかかる時間を短縮できるなどのメリットもあるのです。

マスターバッチ

高濃度の顔料が練り込まれた、ペレット状の着色剤のことです。
ナチュラルペレット(着色剤を混ぜる前のプラスチック原料)に混合することでプラスチックを着色でき、マスターバッチの量を調節することで混合後の色の濃淡を簡単に調節できます。
一般的なコンパウンドと比較してコストパフォーマンスに優れているだけでなく、優れた分散性と飛散・機材汚染のリスクの低さによる取り扱いやすさに優れている点などが評価されています。

無機物強化プラスチック

無機物を混ぜ合わせることによって性質を強化したプラスチックのことです。
よく用いられる無機物としては「酸化アルミニウム(アルミナ)」「ケイ素」などが挙げられ、プラスチックの強度や耐熱性を強化できます。
ただし、あらゆる面においてメリットをもたらすわけではなく、例えば耐疲労性の低下や脆さなどが目立ってしまうという点に注意が必要です。

メルトインデックス(MI)・メルトフローレート(MFR)

プラスチックの、溶液状態における流動性を示す指標のことです。
規定の温度と圧力などの条件下において、ダイを通して押し出したプラスチック素材の10分間当りの質量によって示され、プラスチックの品質管理項目として「密度」と同様に重要な評価項目として扱われています。

モノマー

「単量体」のことであり、ポリマー(高分子)を構成する低分子の単位分子のことです。
モノマーを重合させることによってポリマーが作り出されます。
モノマーの「モノ」とは「1つ」という意味があり、一方でポリマーの「ポリ」には「たくさんの」という意味があります。

プラスチックに関係する技術用語(や・ら・わ行)

ヤング率

物質の「変形させるために必要な力の大きさ」を示す単位です。
これが大きいほど、変形させるために大きな力を必要とする、要するに「硬い物質である」ということになります。
基本的にプラスチック系素材のヤング率は低く、プラスチック素材のヤング率が1桁であるのに対して、金属のヤング率は2桁以上(ダイヤモンドは1000で表される)です。

UL規格

「Underwriter's Laboratolies Incorporated」という、アメリカの民間団体が策定している製品安全規格です。
材料や装置、部品や製品の機能や安全性に関する標準化を目的としており、プラスチックにおいては難燃性について特に重要視されています。
規格に適合している機器については、その旨をラベル等で表示し、証明書の発行を行っています。

溶剤

対象物を溶かして「溶液」にする性質をもった物質です。
プラスチックごとに「耐溶剤性」が異なり、耐溶剤性が高いプラスチックほど溶剤に影響されにくくなっています。

「溶接」と「溶着」の違い

「溶接」とは、2つの素材を溶かして接合する技術のことです。
「溶着」も技術的には同じことをいうのですが、接合した後に溶融部を外観で確認できるものを溶接といい、接合した後でも溶融部を外観から判別できないものを溶着といいます。

連続使用温度

物質の長期的物性評価(耐熱性)の指標であり、40,000時間の間、一定温度の大気中に放置した場合においてその物性値(強度)が初期の50%まで劣化した温度のことです。
例えば自動車のエンジン近くのような高温環境下での使用される素材の、耐熱性(安全性)の目安になります。

ロット

同じ条件の下で生産された製品の集まりのことです。
生産時のロットを「生産ロット」、検査対象となるロットを「検査ロット」といいます。
また、製造で発生する製品単位ごとに品物を管理することを「ロット管理」といいます。

割型

プラスチックを射出成形する際に、製品を型から取り出すために二分割以上できる金型のことです。
製品に「アンダーカット形状」がある場合は成型品を型から離しにくいため、割型を三分割以上にして、型を開く際には上下方向+横方向にスライドさせて離型しやすくします。

ワンウェイ容器

ペットボトルや飲料用の缶のように、一回だけ使用することを前提に製造され、使用したら廃棄しなければならない容器のことです。
ただし、リサイクルによって原料に戻し、再び別の製品になって使用することは可能です。