インサートナットに使用されている材料について

  • 黄銅(C3604)
  • 黄銅(C6801)
  • ステンレス鋼(SUS303)


世の中に生み出された素材は数多く、それぞれ異なる特性を持ちます。インサートナットにもさまざまな素材で作られたものがありますが、使用している素材によって完成品となるインサートナットの性能にも違いが生じることになります。そこで、インサートナットに使用されている材料について解説します。




黄銅(C3604)



黄銅(C3604)は、真鍮(C2801)に鉛を添加した素材です。鉛が添加されたことにより黄銅は「切削性」(材料の削りやすさのこと)が改善されます。その特性から「高速自動盤加工」に適している素材です。精密計器の部品や歯車、時計の部品などに用いられることの多い素材でもあります。



黄銅(C3604)のことを別名「快削黄銅2種」といいます。つまり「快削黄銅1種」があるということで、これを黄銅(C3602)といいます。C3602のほうが「冷間鍛造」(常温環境下で金属に圧力を加えて変形させながら成形を行う加工技術のこと)に向いているのですが、C3604のほうが工具寿命が長くなるという特徴があります。




黄銅(C6801) 



黄銅(C6801)は、鉛を使用していない黄銅です。前述の通り、従来の黄銅には鉛を添加することにより切削性を向上させていましたが、鉛は環境負荷物質の1つでもあります。つまり、鉛を含んだ黄銅は加工や使用による摩耗によって空気中に鉛が飛散したり、鉛分が溶出するリスクを抱えるということなのです。



そこで、鉛の代わりに「ビスマス」を添加して作られたのが、C6801です。鉛を含まずに、従来の黄銅と同程度の強度や切削性、耐食性を実現しました。その他の特徴としては、熱伝導性や導電性に優れているので、電気系や電子系の部品、自動車の部品などに使用されることが多い素材です。




ステンレス鋼(SUS303)



ステンレス鋼(SUS303)は、ニッケルを含んだ素材です。耐食性に優れた鋼種であり、非磁性の金属です。SUS303は「SUS304」に硫黄などを添加したことで切削性を高めています。



SUS304と比較して切削性は改善されているのですが、一方で耐食性と溶接性は劣ります。
また、SUS303のほうが、SUS304と比較して材料費が高くなる傾向にあります。



なお、目視確認だけでSUS303とSUS304を区別することは極めて難しいといわれています。旋盤で削る際には違いがはっきりと判ることが多く、SUS303は粉になるのに対して、SUS304は帯状になることが多いです。